「グリーフケア」という言葉をご存じですか。
テレビや新聞などでも最近聞くようになった「グリーフケア」という言葉。
新聞にも掲載された「グリーフケアの時代に~あなたはひとりじゃない」(2023年秋公開)は、岐阜県高山市に住む三井さんを追ったドキュメンタリー映画です。この映画は夫を亡くした主人公の悲しみを抱えながら懸命に生きる姿やそれを支える人たちを追うことでグリーフケアの大切さを描いています。
グリーフとは日本語で「悲嘆」という意味ですが、身近な人との死別ということに結び付けるならば、大切な人を失った喪失感と一方でその感情から抜け出したい、立ち直りたいとする努力、その二つの気持ちの間で揺れ動く不安定な心の状態をいいます。
そして、そういう状態にある遺族に対して、さりげなく寄り添い、援助することを「グリーフケア」といいます。また、遺族が故人のいない世界に適応していくプロセスを「グリーフワーク」と呼びます。遺族はグリーフケアのサポートを受けることで、自分の気持ちを第三者と共有し、グリーフワークをすることで新しい生活に向けて前向きになることができます。
とくに高齢者は、身近な人々を亡くすことが多いため、悲しみにくれる時間が長くなることがあります。また、孤独感や社会的孤立によって、悲しみを抱える人たちが自分の気持ちを表現する場が少なくなることもあります。しかし、グリーフケアを利用することで、悲しみを抱える人たちは共感を得られる場を持ち、自分の気持ちを共有することができます。
アフターコロナ時代には、多くの人々が失ったものに対して悲しみを抱えることが予想されます。そのため、グリーフケアは、今後ますます重要な役割を果たすことが考えられます。
ではなぜ、グリーフケアという言葉が注目されるようになったのでしょうか。グリーフケアが注目されるようになったひとつの要因にやはりコロナウィルスの蔓延があるかもしれません。コロナウィルスの影響でお葬式のかたちが変わりました。弔う時間、参列者の数が減り自らの悲しみをしっかり咀嚼し整理できないまま葬儀が終わってしまう、ということも起きています。そして、そのことで心が不安定なままそこから抜け出せないというケースも少なくないようです。
だから、葬儀は故人とお別れをする時間というだけでなく、残されたものの心の問題を解決する時間でもあるという認識がグリーフケアという言葉を浮かび上がらせたのかもしれません。